米国自動車産業における日系企業の動向

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「日米ビジネス展望」では、日本及び米国におけるビジネスを展開する上でのトピックを毎回1つずつ選び、それに関する4社それぞれの視点・分析をお送りします。今回のトピックは、1)コンサルティング、2)販売とマーケティング、3)人事、4)経営、の観点から見る日系企業による米国自動車業界です。各記事に対するコメントやご意見もお待ちしています。[Read the English version of this blog here.]

#1 コンサルティング

日系企業による米国自動車業界への導入成功事例

アメリカにおける自動車生産台数は1705万台(2019年実績)と、日本の生産台数921万台と比べ大きな市場である。C.A.S.E.など次世代自動車技術への投資がさかんなアメリカでは常に海外からの新しい技術を求めており、優れた製品・技術を持っていれば、たとえ中小企業であっても設立して間もないベンチャー企業であっても門戸が開かれている。ただし、参入には適切なマーケティングが必要となる。以下に弊社が担当した日系企業の進出事例を紹介する。

事例1: Toyota向けエンブレム

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Toyotaにおいて、エアバッグ破裂時に、ABSにメッキをしたエンブレムの破片が運転者の顔を直撃するクレームが発生した。A-Lexは安全なエンブレムが提供できれば需要が生じるのではないかと考え、日本の樹脂製品メーカーと銘板メーカーと協力し、ゴムのような弾性を持つプラスティックであるエラストマーにアルミ蒸着を施すことにより柔軟性を維持しつつも曲げても表面に傷が入らない工法を提案、更に信頼性を示すために、曲げ強度や耐熱試験など多くのテストデータを提出。結果、全ての米国製造のToyota車で採用となった。

事例2: 排気系ステンレス鋳造部品

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ステンレス鋳造品では巣穴・引け巣などの欠陥が不可避であるが、これらの欠陥が市場に流出すると大事故につながる恐れがある。それにも関わらず、競合の鋳造会社による製品は納品後の欠陥による返品率が約0.05%で、これが業界では平均とされていた。A-Lexはこの欠陥を避けるために、日系の会社と協力。この会社は型設計から最終検査までの13工程すべてにおける徹底した検査体制により、不良品を出荷せず、返品率はほぼゼロ。これにより、競合からの置き換えに成功。

事例3: 自動車部品向け精密金属加工試作

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自動車部品の製造では、量産前のデザインや性能評価のための試作が複数回行われるが、米国のローカル企業では納期が時には1か月以上かかっていた。A-Lexは短納期で精度の高い日本製の試作部品は必ず需要があると考え、1週間納期で対応できる日本企業と協力。またこの企業はSUS 630、64 Titan、Inconelなどの難加工材の切削ができること、1個から受注可であることなどの差別化を強調し、受注に成功。

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A-Lex International Marketingは2007年の設立以来、日米2拠点のスタッフによるマーケティング・コンサルティングを含むローカルサポート機能と、日米政府機関とのパートナーシップにより、匠の技術を持つ日本企業の現地法人立ち上げ、新製品の営業・販促支援において、アメリカ市場にて多くの実績を築いています。アメリカで新規事業を行いたい、新製品の販売を行いたい。このような時はお気軽にA-Lexまでご相談ください。弊社サービスに関する詳しい内容は、https://www.a-lexint.comをご覧ください。

#2 販売とマーケティング

自動車部品メーカーと変化し続ける経営環境

 自動車部品メーカー業界は、回復力がある業界である。過去20年の間、自動車部品メーカー業界は数々の課題に直面してきた。その間失敗した企業も中にはあるが、業界全体としては繁栄を続けてきた。ここにきて再度 、自動車部品メーカーが10年間享受してきた高揚感に突如歯止めがかかった。COVIDパンデミックに重ね、主要なグローバルおよび米国市場の低迷により、自動車部品メーカー業界は今後3〜5年の間強力な逆風に直面することが強いられる。

 業界が今後直面する短期的および中期的課題としては以下の課題が挙げられる。

  • 業界の操業停止と段階的な再稼働による不安定な需要
  • 資金流動性の問題のため、従来の銀行以外の資金源から資金を調達する必要性
  • 設備投資と研究開発予算の削減
  • 稼働率向上とリスク低減のための適切な戦略の必要性
  • プログラムの遅延またはキャンセル

 部品メーカーが直面する長期的な変化としては、以下の変化が考えらえる。

  • 合弁吸収/合併の増加
  • テクノロジーとコストリーダーシップに向けた取り組みかつ、より少ないシステムへの集中
  • 内燃機関(ICE)からハイブリッド、バッテリー式電気自動車(BEV)への移行
  • 征服型企業戦略の一般化
  • 部品現地化の増加

 サプライヤーが直面する逆風は強力かつ予測不可能であるが、大手Tier 1部品メーカー、新興企業および特異性のある部品メーカーはおそらくこの嵐を乗り切るのに最適な位置にいると考えられる。短期的には、中堅規模のTier 1およびTier 2部品メーカーは流動性および負債問題の影響を受ける可能性が高いため、これらの企業の不確実性が高まると考えられる。

 結論として、自動車部品メーカー業界は再び未知なる航海に乗り出すこととなる。短期的および中期的にはかなりの不確実性があるが、この業界は常に変化期と混乱を切り抜け、将来に向けてより強く、優位な位置を見出してきた実績を持っている。

本投稿に関するご質問やご意見をお待ちしております。

#3 バイリンガル人材

日米従業員間のシナジー

ビジネスにおける文化の違いは、多文化のチームやプロジェクトで共に働くアメリカ人と日本人に影響を与え、時には挫折させます。 この文化的な違いが何かを理解することにより、社内や社外のビジネス関係に大きな影響を及ぼします。 そのうちの2つについて詳しく見てみましょう。

高・低コンテキスト社会

人類学者エドワードT.ホールは、高・低コンテキスト社会の概念を説明し、心理学者Geert Hofstedeも文化的次元理論でそれを明らかにしました。 「高」のは集団主義的で、明確なコミュニケーションが少なく、長期的で階層的な関係に焦点を当てています。 「低」のは、​​個人主義、多文化主義、直接表現と平等に焦点を当てています。 「高コンテキスト」の日本では、関係構築、敬意のあるコミュニケーションとヒエラルキーなどの価値をより重視しており、「低コンテキスト」米国では透明性と競争を重視しています。意思決定を例としてあげましょう。米国では、承認が作業に先行し、日本では、作業の大部分が完了してから承認が得られます。 【ちなみに、出身国を問わず、日常生活でも例が見られます。 「高」には、家族の集まり、友人とのパーティー、または常連客がいる地元のレストランが含まれます。 「低」には、空港や大型チェーンスーパーが含まれます。

根回し

「ねまわし」とは日本語で種をまくことを意味し、前もって関係者に事前の承認を得るビジネス行動です。決定をするとき、日本人は提案をさまざまな従業員、部門、マネージャに提案を出し、フィードバックや非公式の賛同を得ることができます。 これは、決定になんで時間がかかるか上手く理解出来ないアメリカ人がいますが、提案が微調整されて提出の準備ができたら、すべての関係者が同じ方向性に向かっていますので、より早く承認が得れます。

まとめ

会社の人事部門や経営陣ができることは、日米の主要な担当者との話し合いを設定し、お互いが理解できるように率直な会話をすることができます。 これらの率直な議論は問題を解決するだけでなく、多くの場合、参加者の関係を強化し、よりまとまったチームを可能にします。

和訳は投稿者本人の言語力を表しますので、ご了承ください。

#4 経営

フォーチュン500にとどまり続ける日本の大企業

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1995年から現在にかけて、96社の日本企業がFortune Global 500から外れました。注目すべきことは、1995年から2005年までの間に最も急激な減少が起きたことです。その後、多数の中国企業がFortune Global 500に入りましたが、日本企業の減少率は2005年から穏やかになり、現在はほぼ横ばいと言えます。

自動車産業での成長

業績が芳しくない分野や戦略的でない分野を仕分け、業績に貢献する企業や世界市場で大きなフットプリントを持つ企業を買収することは、非常に賢明な動きと言えます。

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日立製作所を例にとってみると、売上高は5年間でわずかな減少でしたが、利益は増加しました。日立はその過程でいくつかの賢明な事業売却を行い、収益の低下と利益の増加をはかる一方で、自動車分野(ケーヒン、ショーワ、日信工業)で戦略的な買収を進めています。この業界では、日本の大企業の業績は比較的好調です。この図は、自動車・トラック製造と自動車・トラック部品の2つの主要な自動車セグメントにおいて、日本最大の企業収益がどのように成長したかを示しています。

日本のグローバルビジネストレンドについてもっと知りたい方はこちら:日本の大企業は沈みつつあるのか?

JMNCソリューションズは、 急速な変化の中で日本企業が直面する課題に焦点を当てた専門の経営コンサルティング会社です。COVID-19の危機に対して、日本企業のリーダーが時代の変化と競争市場に適した方法で対応できるよう支援をしております。詳しくはホームページをご覧ください。  

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